単語さえ分かれば…?

英語学習の一つの考え方として、「単語力は基礎力」とよく言われます。

確かに、単語が分からないのに言葉を扱うことはできません。

では、こう言われるとどうでしょう?

「単語さえ分かれば言いたいことが分かる」

単語が理解できれば、それらを頭の中で関連付けたり話の内容を想像したりすることによって、
ある程度言いたいことが読み取れる、ということですね。

これを聞くと、僕はちょっと「え?」って思います。

もちろん文によっては、単語力だけで相手を理解することができることもあります。

でもいつもそんなに都合よくいくものでしょうか?

「単語さえ分かれば・・・」は、英語力アップにつながるのでしょうか?

音読の効果が台無しに!

英語力を高めるための訓練として音読が効果的だとものすごくよく言われています。

実際その通りで、いまさら主張するまでもないくらい音読はとても大切な訓練方法です。

でもその音読をするための前提として、
「自分が読もうとしている文をよく理解している必要がある」ということは
意外と忘れられがちです。

単語一つ一つの発音、
単語と単語の音がくっついたり消えたりする現象、
強弱やイントネーションなど・・・つまり音声。

単語の意味、
フレーズの意味、
文法の成り立ち、
文脈や状況を踏まえた文全体としての意味や込められたメッセージ、
感情など・・・つまり意味背景や構造の仕組み。

文はこのようないろいろな要素が絡み合って出来上がっています。

単語もその一つの要素にすぎません。

だから音読をするときには、単語も含めたこれらたくさんの要素を
よく理解して音読することを目指さないといけません。

そもそも、たとえば普通に日本語をしゃべるとき、
単語だけ理解していて発音や文法には無頓着、なんてことは普通あり得ないですよね。

いちいち文法を考えたりはしませんが、意識しなくてもいいくらいの深いレベルで
日本語ネイティブとしての発音や文法を僕たちは身に付けていて、
それを声に出して体現しているはずです。

音読を通じて目指す場所はここにあるわけです。

でも、もし「単語さえ分かればなんとなく言いたいことが分かる」
という姿勢で音読するとすれば、極端すぎる話だとは思いますが、単語の意味以外は
ほとんど何も分かっていないのに音読をしてしまうことになります。

これでは効果は得られません。

音読の練習効率を極端に下げてしまうので、「単語さえ・・・」はちょっと危険です。

単語だけでは理解できない文章も

次の文を見てください。

You often hear it said that fathers want their sons to be what they feel they themselves cannot be.

これはずいぶん昔のものですが、かつての大学共通一次試験(大学入試センター試験)の試行テストで出題された文です。

いかがでしょう?

一つ一つの単語はとても基本的なものばかりで意味もよく分かると思うのですが、
文全体の意味となると、なんだかよく分からないと思われる方も多いのではないでしょうか。

さすがに現在こうした文をセンター試験で見かけることはありませんし、
日常会話でもほとんど耳にするようなレベルのものでもありません。

でもあえてこんな文をご紹介するのは、「単語が分かっても文が理解できない」ことがあることを
実感していただきたいからです。

記事の主旨から逸れてしまうので細かい説明は省きますが、この文を読み解くためには、

  • 形式目的語のit
  • itを受ける名詞節を導く接続詞that
  • 関係代名詞what
  • 連鎖関係詞

などの文法知識が必要です。

theyやthemselvesといった代名詞の指すものを把握する力も重要です。

これらを踏まえて日本語訳すると次のようになります。

「父親というものは自分の息子たちに、彼ら(息子たち)自身がそうなれるとは感じていないような存在になって欲しがっている、ということが言われているのをしばしば耳にする」

単語の意味だけでなく、文法知識やこれに伴う中身の把握力が伴ってはじめて、
文全体の意味がこのように見えてきます。

ここまで読んでいただくと、軽々しく「単語さえ・・・」とは言えないことが
分かっていただけるのではないでしょうか。

発音と文法も合わせた学習が大切!

「単語さえ分かればなんとなく言いたいことが分かる」という考え方は、
正しい音読を遠ざけたり、文法に従って適切に意味解釈をこなしていくという
基本的なことを妨げたりしてしまうリスクを抱えています。

もちろん、単語力を身に付けることはとても大切です。

単語力を使って文意を想像し、相手の伝えたいことを推し量ることも立派な言語能力です。

また、単語を覚えることはシンプルな学習であるため、それ自体は結果が出やすいものでもあります。

でもだからこそ、英語の勉強に詰まりそうになったとき、
「とりあえず単語を覚えよう」、「単語力でどうにか乗り切ろう」という発想に陥ってしまいがちです。

どうか単語力に偏りすぎることなく、発音や文法とも並行して幅広く総合的な英語学習を進めてみてください。

専門家コラムの提供者

フリーランス英語教師 井上勝博 様

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